今回は、厚生労働省が7月12日に公表した「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」についてご説明いたします。
個別労働紛争解決制度とは
「個別労働紛争解決制度」とは、従業員と事業主の間で発生する労働条件や職場環境に関するトラブルを未然に防ぎ、迅速に解決するための重要な仕組みです。
具体的には、以下の3つの方法があります。
- 「総合労働相談」(都道府県労働局、各労働基準監督署内、駅近隣の建物など379カ所(令和6年4月1日現在)に総合労働相談コーナーを設置し、専門の相談員が対応)
- 都道府県労働局長による「助言・指導」
- 紛争調整委員会による「あっせん」
相談件数が高止まり
今回の公表で注目すべき点は、相談件数の多さです。総合労働相談の件数が4年連続で120万件を超えています。
内訳を見てみると
- 法制度の問い合わせ 83万4,816件
- 労働基準法等の違反の疑い 19万2,972件
- 民事上の個別労働関係紛争相談 26万6,160件
また、助言・指導申出は8,346件(前年度比4.5%増)、あっせん申請は3,687件(同5.6%増)となっています。
働き方の多様化や従業員の権利意識の高まりを感じます。
いじめ・嫌がらせが最多
民事上の個別労働関係紛争相談の内訳を見ると、最も多いのが「いじめ・嫌がらせ」に関するもので、60,113件に達しています。これは、12年連続で最多の相談内容となっています。
上位3つを見てみましょう。
- いじめ・嫌がらせ 60,113件
- 自己都合退職 42,472件
- 解雇 32,943件
職場での人間関係や労働環境に関する問題が依然として深刻であることを示しています。
特にパワハラ防止法の全面施行により、パワハラに関する相談も増加傾向にありますが、これらの相談は「法制度の問い合わせ」や「労働基準法等の違反の疑いがあるもの」として計上されているため、いじめ・嫌がらせと合わせて企業にとっては大きなリスクとなります。
今後、企業としてはこれらの問題に対する対策をより一層強化し、早期の対応を図ることが求められます。
まとめ
労働トラブルは、企業にとって大きなリスクであり、未然に防ぐことが何よりも大切です。
従業員が安心して働ける環境を作っていけば、企業の生産性向上にもつながります。
今回の統計を参考に、自社の取り組みを見直してみてはいかがでしょうか。