今回は、厚生労働省が令和5年度に実施した「ハラスメントの発生状況に関する調査結果」についてご紹介いたします。
顧客からのハラスメント=カスタマーハラスメントが深刻化
調査結果によると、過去3年間に企業が受けたハラスメント相談の中で、「実際にハラスメントに該当する」と判断されたケースで最も割合が高かったのは、「顧客等からの著しい迷惑行為」で、86.8%に上りました。次いで、「セクシャルハラスメント」(80.9%)、「パワーハラスメント」(73.0%)が続いています。
特に注目すべきは、「顧客等からの著しい迷惑行為」の増加です。この項目において、過去3年間で件数が増加したと回答した企業の割合が最も高く、カスタマーハラスメントが深刻な問題となっていることが浮き彫りになりました。
迷惑行為が増えている背景とは?
要因としては、以下の3つが考えられます。
- 「お客様は神様」という意識のこじれ
こちらのフレーズは有名です。この言葉は企業側が心がけるものであって、顧客が自身の権利を拡大解釈し、振りかざすためのものではありません。 - クレーム対応の難しさ
売上のために顧客満足度を重視するあまり、従業員がカスタマーハラスメントに対して我慢してしまうケースも多々あります。すると、顧客は「このくらい言ってもいいんだ」と言動を改めることができません。 - ハラスメントに対する意識の低さ
以前までは、顧客からの迷惑行為をハラスメントと捉える風潮がありませんでした。そのため、カスタマーハラスメントが起きていても問題視されずに放置されているケースが多々あります。
このように、カスタマーハラスメントの問題は根深い背景を抱えています。企業にとっては従業員が安心して働ける環境を整えることが、ますます重要になっています。
企業に求められる対策
企業は従業員に対する適切な対応策を講じる必要があります。上記で述べたような状況下で、企業には以下のような対応が求められます。
- 従業員へのサポート体制の強化
- 相談窓口の設置
- 管理職への対応研修
- 顧客への適切な対応方針の策定
- 許容できない行為の明確化
- 従業員が適切な対応が取れる顧客対応のマニュアルの作成
- 社内外への啓発活動
- ハラスメント防止に関する研修の実施
- 顧客へのマナー啓発
教育や研修を通じて、ハラスメントを未然に防止する取り組みを強化することはもちろん、顧客対応の場面ごとに適切なサポート体制を整えることが不可欠です。
まとめ
ハラスメント問題は、もはや職場内だけの問題ではありません。
顧客との関係性においても、ハラスメントが発生する可能性があることを認識し、適切な対策を講じることが重要です。
従業員が安心して働ける環境を作ることは、企業の生産性向上にもつながります。
ぜひ、今回の調査結果を参考に、皆様の職場でもカスタマーハラスメント対策を見直してみてはいかがでしょうか。