現代の医療技術の進歩により、病気にかかっても治療を行いながら職場復帰を果たす方が増えています。しかし、実際に病気と仕事を両立させることは、本人にとっても、企業にとっても、簡単なことではありません。
そこで今回は、労働政策研究・研修機構による「病気の治療と仕事の両立に関する実態調査(WEB患者調査)」の結果をもとに、気になるポイントを見てみましょう。
調査対象
調査対象は、調査会社に登録しているインターネット調査登録モニターのうち、全国の年齢(15歳以上64歳以下)の就労者の男女で、調査会社が保有する過去5年間の疾患パネル(がん・脳血管疾患・心疾患・肝炎・糖尿病・難病等)に登録のある者。スクリーニング調査(SC調査)を実施し、該当する調査対象(過去5年間にがん・脳血管疾患・心疾患・肝炎・糖尿病・難病の病気治療をした者(経過観察含む))のみが本調査に回答する方式。調査実施時期は2017年11月2日~11月15日。回収数は本調査が7,694件(SC:19,959件)。
主な疾患と通院頻度
疾患について
- 糖尿病:34.3%
- がん:19.8%
- 難病:17.6%
- 心疾患:15.9%
- 脳血管疾患:6.3%
- 肝炎:6.0%
驚くことに、糖尿病が3人に1人という高い割合を占めています。
通院頻度について
どの疾患においても、通院頻度(疾患罹患後から1年間の平均)は「月1回程度」が最も多く、「3カ月に1回程度」と続いています。この結果から、多くの患者が比較的少ない頻度で治療を続けていることがわかります。
休職や休暇の取得状況
治療のために連続2週間以上の休暇や休職を取得した人は、以下の結果となっています。
- 取得した(30.9%)
- 取得していない(51.9%)
- 休職制度がない・適用されない(17.2%)
半数以上の方が休職を取得していません。取得したとする割合が高い疾患は、脳血管疾患(56.9%)、がん(53.5%)などでしたが、一方で糖尿病(14.0%)は他の疾患に比べて低くなっています。
休職期間については、以下の通りです。
- 「1カ月程度」(31.5%)
- 「2週間程度」(26.3%)
- 「2カ月程度」(13.6%)
- 「3カ月程度」(9.4%)
1カ月以下では約半数以上、3カ月以下でも全体の約80%を占めており、比較的短期間で職場復帰されているようです。
退職状況
疾患罹患後において、「現在も同じ勤め先で勤務を続けている」(78.3%)方が多くいる一方、“仕事を続ける自信がなくなった”等の理由で「依願退職した」(14.7%)、「会社側からの退職勧奨により退職した」(3.6%)、「解雇された」(1.7%)、「休職期間満了により退職した」(0.7%)方もいます(合計20.7%)。
職場での相談相手
疾患に罹患した場合、誰に相談するかとの調査では
- 所属長、上司:63.2%
- 勤め先には一切相談、報告しなかった:26.9%
上司への相談が最も多いですが、4人に1人は誰にも相談していません。このような状況を考えると、人事労務担当者だけでなく、管理職や直属の上司も、ある程度の知識を持ち、相談しやすい環境を整えることが求められます。
まとめ
これらの調査結果から、病気の治療を行いながら働く方の多くは、月1回程度の通院頻度、または1カ月以内の休職で職場復帰を果たすという実態も明らかになりました。
企業としては、公的制度の案内や相談窓口の提供、また制度整備を進めることで、治療中の従業員がより安心して力を発揮できる環境作りを目指すことが重要です。これにより、従業員の定着率向上や企業の魅力向上にもつながるでしょう。