従業員の健康管理、特に労働時間と睡眠時間の確保は、企業経営における重要課題となっています。今回は、政府が公表した「過労死等防止対策白書」の内容と、11月の「過労死等防止啓発月間」における取り組みについて、経営者の皆様に押さえていただきたいポイントをご説明します。
過重労働で従業員の睡眠時間が減少?
政府の令和5年版「過労死等防止対策白書」の概要によれば、就業者への調査で、理想の睡眠時間を6時間以上とした人が9割を占めた一方、実際に6時間以上確保できた人は全体の半数であり、産業医の視点から、過労の症状における睡眠がとれなくなることの危険性が指摘されています。労働時間が長くなるほど睡眠時間は短くなる傾向にあります。企業としては、今後もこのような問題を踏まえ、過重労働防止の施策を考えていく必要があります。
過重労働解消へ向けた取組みとして
厚生労働省は、「過労死等防止対策推進法」に基づき毎年11月を「過労死等防止啓発月間」と定め、過労死等をなくすためのシンポジウムやキャンペーンなどを行っています。過労死等の件数は近年高止まりの状況にあるとされ、令和6年4月1日から時間外労働の上限規制が、建設の事業、自動車運転の業務、医業に従事する医師等にも適用されることもあり、引き続き、長時間労働の削減等の過重労働解消に向けた対応を行うことが求められています。
長時間労働が行われていると考えられる事業場等へ重点監督が行われます
月間中は、長時間労働の是正や賃金不払残業などの解消に向けた重点的な監督指導などが行われ、その対象は以下の事業場等とされています。
- 長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場や各種情報から時間外・休日労働時間数が1カ月当たり80時間を超えていると考えられる事業場等
- 労働基準監督署およびハローワークに寄せられた相談等から、離職率が極端に高いなど若者の「使い捨て」が疑われる企業等
重点的に確認する事項としては、時間外・休日労働が36協定の範囲内であるか、賃金不払残業が行われていないか、不適切な労働時間管理はないか、長時間勤務の従業員に対する医師による面接指導等、健康確保措置の有無等としています。
まとめ
過重労働対策は、企業の持続的な成長と従業員の健康維持の両面で欠かせません。特に今年4月からの時間外労働上限規制の拡大を踏まえ、労働時間管理の見直しと従業員の健康確保措置の充実を、改めてご検討ください。